男気スイッチ
 隼人はこの店のダウンタイムはあまり好きではない。隼人の性的欲求を満足させるのに十分なものであることには違いないが、それと同時に底無しの欲望や嫉妬心に火をつけかねない事態に発展することがしばしばあるためだった。楽しい反面悲しくなるのだ。 隼人はななみを見つめた。頬は赤みを帯び、口元がゆるんでいる。『どうした? 酔ったのかい』 『…』 ななみは隼人の問いかけに答えず無言で隼人を見た。 さらに近くで見つめた。 すると突然、ななみは上体を前方へ傾け、隼人の唇に唇を重ねてきたのだった。 隼人は動揺した。 しばしの間、ななみの支配下にあった体が自由を取り戻し始めたのは、重ねた唇が離れてからの事だった。
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