つま先で一歩
「大丈夫です。ここ解散で問題ありません。」

「いやいやまだ電車あるから送ってくって。遅くまで付き合わせた訳だし。」

「いえいえ!どちらかと言えば私から誘ったようなものですし、しかもご馳走になってしまってこれ以上は。」

「こんな遅い時間に女の子一人じゃ危ないって。」

「大丈夫です。ちゃんと帰れますから。」

本当なら飛んで喜ぶ程の申し出なんだけど、申し訳なさとこの後に事を考えるとつい強めに遠慮してしまう。

それが良くなかったのかな、次第に須藤さんは表情を曇らせてしまった。

「…誰か迎えでも来てくれるってこと?」

「迎え?」

「いや…頑なに拒もうとするから…彼氏に誤解されるのが嫌だったとか。」

「ぜ、全然違います!申し訳なくて…。」

それだけが理由じゃないんだけどそんなこと言える筈もない。

頑なに拒むだなんて、須藤さんに嫌な思いをさせてしまったのだろうか。

「嫌な言い方して…すみません。」

「問題ないよ。でも彼氏は迎えに来てくれないの?」

「い、いたら男の人と2人で飲みになんていけませんよ!」

「あ、一緒だ。」

よかった、ということは須藤さんもフリーってことなのかな。

でもこれは仕事の延長だから何とも言い難いよね、気を遣って私に合わせてくれたのかもしれないし。

「私この後行くところがあるので…ここで失礼しますね。」

淡い期待を抱いたなんて秘密、ちょっと盛り上がった自分の暴走ともいえる物体をポケットの中で握りしめて自分を戒めた。

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