元姫
「俺、椎に言ってくる」
「だめ!」

今すぐにも言いに行きそうな陽を止めた。
今までなら、少しでも悪化してたら言ってた。
でも、何でか言いたくない。

「何で?」
不思議そうに私を見ている。

「心配かけたくない。今は、友香の隣で楽しそうに話してるから邪魔しちゃダメだよ」

そう、邪魔しちゃダメだ…。

「みー…」
視界が霞んできた。

「じゃ、俺が傍にいていいよね?」
え?
驚きで少し涙が引っ込んだ。

「みーが心配だしもし倒れたりしてもダメだから、傍にいる。ダメ?」
陽…。

決めたことを曲げない陽。
たぶん今回も折れないだろう。
それに私を思って言ってくれてることだし。

「わかった、ありがとうね。でも椎に言わないでね?」

「おう!」

私達はその後、どちらからも話すことなくただ、騒いでいる皆を眺めていた。
< 33 / 76 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop