元姫
「美衣、紘…」
手術室の前にある長い椅子のところにお母さんが座っていた。

さっきまで泣いていたのか泣いた跡がある。
泣きすぎたのか疲れが顔に現れていた。

「父さんは…」
私の後ろからにぃが話しかけていた。

「助かるかは、わからないって…」
そんな……。

それ以上何も聞けなかった。
私はお母さんの言葉にショックを受けて、足に力が抜けてその場に座り込んでしまった。

「大丈夫か、みぃ」
どう踏ん張っても立てない。
言葉を出したいのにうまく出せない。
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