元姫
「俺の手につかまって」
にぃの手になんとかしがみついた。

にぃはそのまま私をお姫様抱っこして椅子に座らせてくれた。

「もう、大丈夫?」
心配そうに私の顔をのぞいていた。

「もう…大丈……夫」
ゆっくりでしか話せない。
少しずつ自分を落ち着かせた。

「大丈夫だよ。きっと父さんは大丈夫」
私を安心させるためか自分に言い聞かせているのかはわからないけど、にぃの言葉を聞くと大丈夫かなって思える。

チラッとお母さんを見るとただ祈っていた。
それからもう何時間経ったかわからない。

やっと手術中のランプが消えた。
バッとお母さんが立って、私達も立ち上がった。

少しして先生が出てきた。

「せ、先生。主人は…」
「奥様ですか?」
「はい…」

先生は気まずそうな顔をしていた。
大丈夫…だよ……ね?

「一命はとりとめました」
「それなら…「しかし、」
お母さんの声を遮って先生が続けた。

「いつ目を覚ますか分かりません。もし、目が覚めない状態が続くと持って2週間です…」

そ、そんな…。

「そ、そんなぁ……」
お母さんは我慢が出来なくなったのか静かに泣いている。

ツゥーと私の頬にも冷たいものが流れた。
涙とは違う冷たさがまた頬を触れた。

よく見るとにぃの手だ。
私の涙を拭ってくれてる。

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