忘れ物 ~ホテル・ストーリー~
スタッフで、ラウンジでカトリ-ヌ・ドゥシャン女史がホテルを出て行くのを引き留めていた。

そして、待つこと数十分。

チーフコンシェルジュの深田が急いでカトリ-ヌ・ドゥシャン女史のもとにやって来た。

「ドゥシャン様、こちらに見覚えはございませんか?」
深田は流ちょうなフランス語で質問した。

彼は、ビニール袋に入れた紙のようなものをカトリ-ヌ・ドゥシャン女史に差し出す。

「まあ、まあ、どうしたのこれ?」
女史は、そう言っただけでその紙をじっと見つめて動かなくなった。


「申し訳ありません。お忘れ物でしたらすぐに顧客情報に登録させていただくのですが、このようなメモ書き一枚でしたので、当方でも記録しなかったのでしょう。
すぐにお渡しできなくてすみません」

チーフコンシェルジュは、深々と頭を下げた。

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