忘れ物 ~ホテル・ストーリー~
他にフランス語を聞き取れる従業員がいなかったのでと断って、友里恵は電話に出た。
「あら、若いお嬢さんね」ドゥシャン女史の声は明るかった。
「はい、若くてもご用件をお伺いすることなら、私にもお手伝いできると思っております」
「いいのよ、若くっても。若いことはいいことだと思うわ」
「はい。ありがとうございます」
「それでねえ、あなたの力で説得してくださらないかしら。
どうしても満足していただけないの一点張りなのよ。
私は虎の門ホテルに泊まりたいのよ。工事してるから、本館に泊まれないからなんてどうでもいい事だって伝えてくださる?」
「かしこまりました」
私は、予約係の上司を説得し、カトリ-ヌ・ドゥシャン様に結果を伝えた。
「まあ、ありがとう。私のために戦ってくれたのね。うれしいわ。お会いできるのを楽しみにしています」