忘れ物 ~ホテル・ストーリー~

かくして、カトリ-ヌ・ドゥシャン女史はホテルにやって来た。

背が高くすらっとした女性で、質のいいウールのコートを上品に着こなしている。

「私が、ホテルに滞在中の案内させていただきます」と友里恵が挨拶すると、

「まあ、なんて可愛らしい方。あなたがこのホテルの人と戦ってくれたのね?本当にうれしいわ」そう言って友里恵を抱きしめた。

カトリ-ヌ・ドゥシャン女史は、フロントにいる従業員に微笑むと、ホテル全体を眺めた。

「本当にねえ。出来れば私も本館が建替わる前にここに来たかったわ」

「申しわけございません」友里恵が謝った。

「あら、どうしてあなたが謝るの?」


言葉に不自由がないようにと、友里恵が近くにいてお世話をすることになった。



あら、シャワーの出が悪いわ。

ナイトガウンを忘れたの。いいものがないかしら。

一時間ごとに呼び出される気がして、カトリ-ヌ・ドゥシャン女史の世話は大変だった。

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