忘れ物 ~ホテル・ストーリー~
そして、彼女はその日の夕食、よく冷えたプリッとしたカキをいくつも平らげた。
「あら、よくわかったのね」
女史は心から感心したように言う。
「はい。宮城産の物でございます」
それを聞いてカトリ-ヌ・ドゥシャン女史は、軽やかに笑った。
「このことについては、あなたの上司にお礼を言わなくては」
「はあ、申し訳ありません」
「何度も言うけど、謝ることはないのよ。でも、よくわかったわね。今から言うこと上司の方にお伝えくださる?」
「はい」
「カキは大変おいしゅうございました。5年前の味とまったく一緒でしたと」
「かしこまりました」
友里恵は深く頭を下げた。