忘れ物 ~ホテル・ストーリー~
事務室に戻って、深田にカトリ-ヌ・ドゥシャン女史に言われたことを伝えた。
深田は笑って答えた。
「そうか、流石カトリ-ヌ・ドゥシャン女史。カキが5年前にうちで食べた業者のものと同じだって気が付いたか」
「えっと……」
「客が気が付くようなサービスじゃあ、まだ半人前なんだよ」
「はい、勉強になりました。
「うん、素直でよろしい」
深田は、友里恵の肩をそっと抱くようにすると、
「さあ、仕事だ」
といって事務室を出て行った。