こじれた恋の終わらせ方
こじれた恋の終わらせ方
「真尋~俺の真尋が~」



高級ホテルの最上階。

街の灯りが一望できるバーで大の大人が何かを嘆いている。


その発する言葉から、失恋のようにも聞こえるがそれは違う。


「しかたないでしょ?真尋ちゃんだってもう28歳なのよ?

 結婚してもおかしくない歳なのよ。」


31になってもろくな恋愛経験もない自分を棚に上げてそんなことを言ってみる。内心は失笑ものだ。


「わかってるよ!!でもこどもだぜ?そんなん聞いてないよ~」


「でも、こどもが生まれたら溺愛するんでしょ?」


「そりゃ、真尋の子だから可愛いがるのは当たり前だろ?でもさぁ~。」


「諦めなさい。」


「何だよ。九条。他人事だと思って。
 
 酷い女だな。」


ふてくされながら、カクテルを飲む仕草も様になる。



酷いのはどっちだと言いたくなる。


隣の男が言っている『真尋』とはこの男の妹の名前だ。


その真尋ちゃんが、今日結婚の挨拶に来たらしい。しかも授かり婚。


居酒屋ならまだしも、こんな素敵なところに呼び出されてまでシスコン男の愚痴に付き合わされることになるとは思わなかった。


数時間前の期待した自分を罵倒したい。



ちらっと横を盗み見る。


両肘をついてふてくされる姿も様になる。



水野千尋31歳。


10年以上私の心に住み続ける厄介な男。
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