こじれた恋の終わらせ方
「私ね、麗華が羨ましかったの。」


「え?」


予想外の発言にのぞみを見るとのぞみは困ったように笑った。



「千尋がさ、たまに麗華の頭をくしゃくしゃってしてたの。」


「くしゃくしゃ?」


「そう。あの頃。麗華、髪の毛短かったでしょ?その髪の毛がぐしゃぐしゃになるくらい。」


「そんなことしたっけ?」


記憶にない。


「してたよ。私の頭は優しくなでるのに、麗華の頭は乱暴にくしゃくしゃって。」


そう言われてもピンとこない。


「私にするより乱暴で、でも男の子にするより優しくて。それを見るたび、あぁ千尋にとって麗華は特別なんだなって思ったの。

 別にしょっちゅうやってたわけじゃないんだよ。でもね、たまにたまーにやってるのを見るたびに心がモヤモヤして不安で仕方なかった。」


のぞみがそんな風に思っていたなんて考えもしなかった。


「別に、二人が浮気してるとかそんなことを疑ってたわけじゃないの。

 千尋がね、私を大事にしてくれてたことはわかってたの。でも、優しくなでてくれる手も、乱暴にくしゃくしゃってする手も私だけのものでいて欲しかったの。」


「ごめん。俺、ホントに自覚なくって・・・」



「謝らないで。謝るのは私の方。

 私ね、私と別れた後、千尋は麗華を選ぶんじゃないかって思ってたの。でも、それだけは嫌だった。そんな資格ないのにね。

 だから、別れる時、麗華のこと好きなんでしょって言ったの。千尋の性格上、彼女だった私にそんなこと言われたら絶対に麗華とは付き合わないと思って。」


俺は呆然とのぞみを見つめた。


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