こじれた恋の終わらせ方
『あぁ~すいません!!切らないでください!!』



こっちの苛立った空気が伝わったのか、焦った声で話すのは妹の結婚相手。つまり認めたくはないがもうすぐ義理の弟になる男だ。



「何だ。真尋はどうした?」


『真尋はちょっと手が離せなくって。』


「じゃあ、何だ悪いが今」



『お義兄さん、九条麗華さんってご存知ですか?』



「っ?!」



適当な理由をつけて電話を切ろうとした俺に、電話の相手は正に今俺の頭の中の大半をしめている人間の名前を告げた。



「お前、何でその名前・・・」


『俺ら、今、S区のロイヤルホテルにいるんですけど』



ロイヤルホテルという単語に胸がぎゅっと締め付けられた。昨日、麗華と過ごしたホテルだからだ。


「で?」


平静を装い続きを促した。


『今、九条麗華さん、見合い中みたいなんですけど・・・』



俺の中で何かストンっと納得が言った。


思えば、昨日から麗華はおかしかった。

麗華という人間は、たとえ酔ったとしてもあんな風に男を誘う人間ではない。



きっと初めから、俺との関係を切るつもりだったのだろう。



俺の中で黒い感情が渦巻いている。でもそれと同じくらいやるせない。





それならばどうしてあんな顔して見せたんだ・・・


昨日の、痛みに耐えながらほほ笑む麗華の顔が脳裏に浮かぶ。



あんな顔されて、忘れられるわけないじゃないか・・・・・。



『あの・・・お義兄さん、聞いてます?』


「あぁ、悪い・・・」


全然聞いてなかった。



『その、差し出がましいと思ったんですが、見合いの相手がちょっと。』

「ちょっとなんだよ」


『その相手、医者なんですけど、その人。ちょっと前に元恋人ともめて警察沙汰になりかけたとかで、表向き自主退職なんですが、実際は病院にいられなくなったとか。後、本人知らないんですけど、たぶん、大学時代の真尋のストーカーです。』



「すぐ行く。俺が行くまで何もするな。」


俺は、素早く用意に取り掛かった。



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