こじれた恋の終わらせ方
それから、私には彼氏ができなかった。


私を好きだと言ってくれる物好きはいたけれど、水野を忘れられなかった私は同じことを繰り返すのが嫌だったのだ。


水野との再会は、就職直後に開かれた同窓会。


仕事で遅れていくと、大勢に囲まれた水野を見つけた。


その瞬間、私の心は高校時代へと引き戻される。


私は、自分で思っているよりずっと強く水野が好きなのだと思い知った。



そんなこと知る由もない水野は、私を見るなり、手を振って、人の輪から抜けて近づいてきた。


みんなの視線が水野を追いかけるのがわかる。




「よぉ、九条。かったな。」


「うん。ちょっと仕事で。」



水野がじっと私の顔を見る。



「何?」


「いや、やっぱりちゃんと綺麗になったなと思って。」


そう言って、あの時のようにポンポンと私の頭を撫でた。


「な、何言ってんの?!」


動揺する私をよそに水野は人の輪へと戻って行った。


同窓会での会話はそれっきり。


だが、その数週間後、私は仕事帰りの水野と遭遇する。


そこで私たちの会社が意外と近いことを知るのだった。



それから私たちは、会社帰りに2人で飲むようになる。


良いか悪いか、それから9年間その関係は続いている。


途中、水野が横浜へ転勤になった時でさえ本社に来るたびに会っていた。



そんなんだから、私は水野への想いを捨てきれない。かといって今更告白もできない。
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