こじれた恋の終わらせ方
「くーじょー」


水野はそう言ってほっぺをつんつんするのを辞めない。


「俺ってそんなに頼りない?」


その声はどこか真剣みを帯びていた。


水野と目が合う。



今日、なぜ今日に限ってホテルのバーになんて呼び出されたのか。


いつもと違うシチュエーションに期待した自分。



それならばいっそ、自分から仕掛けても良いんじゃないか。


どうせ、もう踏ん切りをつけようと思っていたのだから、最後に夢を見たっていいんじゃないか。



私のほっぺを突っついていた水野の手を取る。



「頼ってもいいの?」


水野の大きく見開かれる。


「九条・・・」


私は、今どんな顔をしているのだろう?


水野にはどんな風に映っているのだろう?


世間では、女の人はどんな風に男の人を誘うのだろう?


わからない。でももう後には引けない。



水野の手を自分の頬に当てる。


「真尋ちゃんのことがショックなら私が慰めてあげる

 だから、水野も・・・・」


その先、何も言うことはできなかった。何て言えばいいのかわからなった。


ただ、自分の心臓の音がうるさい。


「九条、何言ってんのかわかってんのか?」


そう問われ、無言で頷いた。



私は、水野に手を引かれそのままバーを後にした。
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