Mysterious Lover
「あ、ごめんっ、まだ。もう少し待って」
「ん、早めにお願い。カンプ、明後日提出予定だから」
口調が、少しきつくなる。
「……りょーかーい」
翠の不審そうな顔が、チラッとこっちを見たけれど、わたしは気づかないふりをした。
結局、拓巳はその日1日、必要事項以外、わたしと口をきかなかった。
◇◇◇◇
駅の出口から外へ出ると、足を引きずるようにして夜道をたどった。
足が重い。
でも、それ以上に、心が重たくて。
わたしは……どうしたいんだろう?
もう、自分の気持ちが全然わかんない。
今日は一日集中できなくて。
……何やってんだろ、わたし。
はあっ……
思わずため息がこぼれてしまう。