Mysterious Lover
静かな住宅街の中の道。
何度も振り返りながら歩くのは、もう体に染み付いた習慣になっていた。
昨日のことがあるし……
もしかしてどこかから、見られてるかも?
そう思ったんだけど。
でも、見渡す限り、人影は見えない。
やっぱり警察に行くべきかなって考えないわけじゃないけど。
突き落とされたっていうのも、証拠があるわけじゃないし。気のせいだって言われたら終わりだし……。
結局、今日工藤さんは一日外回りでつかまらなくて、話せなかったから。
明日は話さないと。
ぼんやり考え事をしていたせいかもしれない。
リリリリリリ……
着信音が聞こえた時、予想以上に驚いてしまって。
震える手で引っ張りだしたスマホは、わたしの手から零れ落ちた。
カチャン!
破裂音みたいな鋭い音とともに、それは地面に叩き付けられる。
いっそのこと壊れてくれたら……
なんて、虫のいい考えがよぎったけれど。
アスファルトの上で、それは点滅を続けてる。
やっぱり。非通知だ——
どくんっどくんっ……
呼吸が、自然に浅くなってしまう。