Mysterious Lover
お願い……お願い、切れて……!
一生懸命念じたけど、一向に切れる気配はなくて。
そうか、あいつとは限らないか……
首だけのばして、画面を確認してみた。
「拓巳、だ……」
なんの用だろう、チラッとそんな考えが頭をかすめたけれど、今はとにかく、誰かの声を聞きたかった。
手を伸ばし、這うようにしてなんとかスマホを手に取った。
「は……はい……」
かすれた声を絞り出す。
『奈央さん?』
涼やかな、いつもと変わらない拓巳の声がして。
拓巳だ……拓巳の声だ……。
涙がどっとあふれ出す。
わたしは叫び出してしまいそうになった口を、手で押さえた。
『あの……ごめんなさい』
「え?」