Mysterious Lover

「奈央はどうなのよ? 狙っちゃえば?」

「わたしは……年下は興味ないもん」
好みは年上だ。

「ああ、はいはい、工藤部長ね。ラブラブで結構なこと」

さらって言われて、わたしは焦って指を唇に当てた。

「ちょっ……大きな声で言わないで! 翠にしか言ってないんだから!」
うちは社内恋愛禁止ではないけれど、やっぱり工藤さんは上司だし、バレるといろいろやりづらい。

「はいはい。でもさ、バツイチのアラフォーなんて、どこがいいんだかねえ? 子どももいるんでしょ?」

「一緒には住んでないもん」
ちょっと言いわけっぽく聞こえたかな?
もちろん、どんな過去があったって、工藤さんは工藤さんだけどね。

「ま、否定はしないよ。見た目は全然30代で通用する男前だし、声とかめっちゃセクシーだしね」

「でしょ?」

「でもさぁ……」

翠の言葉が、ふと途切れる。
その先に続く言葉は、いつも同じ。だからわかってる。

——あんたたち、ほんとに付き合ってるの?
< 11 / 302 >

この作品をシェア

pagetop