Mysterious Lover
◇◇◇◇
しばらく泣いて、少し冷静さを取り戻したわたしは、拓巳と並んでソファに腰を下ろした。
拓巳はギュッてわたしの手を握ってくれてる。

玄関先では気づかなかったけど、拓巳はホスト仕様の白スーツ姿だった。
バイトを抜けてきたから、らしいんだけど。
間近で見ると、それがまた見事にはまっていて、すごく似合う。
まさに、王子様だ。
この格好でお酒注いだりしてるところを想像して、無意識のうちに、ふふって口元がほころんでいた。

「よかった。ちょっと落ち着いた?」
笑顔の不意打ちに、心臓が飛び跳ねる。
それが顔に出てしまいそうな気がして、焦って立ち上がった。

「コーヒーいれようか? インスタントだけど。紅茶の方がいい?」

「うーん、ミルクたっぷりのカフェオレで」

「わかった」

リクエスト通りのカフェオレを作って、マグカップを拓巳の前に置いた。

すると、拓巳がカップを取り上げ、おかしそうに笑う。
「マロマロンだ。ほんとに奈央さんて、こいつ好きなんだね」
あ、そうか……壁紙のマロも見られてたんだっけ。

「ね、なんかこいつの顔、奈央さんに似てない?」

「はあっ!?」
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