Mysterious Lover

どうしてこいつ、そんなに好き好きって、気軽に口にできるの?
こんな時に、こんな風に。
これってずるいんじゃないの?

どうしたらいいか、わかんなくなるじゃない。

「好き」って言葉を、信じてしまいそうになる。この世界の、唯一の真実のように、信じてしまいそうになる。


わたしは拓巳が傍ににじり寄ってきていることに気づかなかった。
そっと頬に指が触れて、わたしはハッと顔をあげた。

「たっ拓巳?」
拓巳の整った顔が、間近にあった。

「犯人つかまえたら、ご褒美くれる?」

「え?」

「例えば……キスとかさ?」

そのまま拓巳の顔が近づいてくる。

「き……キスって……」

ちょちょちょっと待って、あの……

ソファの端へ逃れようとするけど、拓巳の腕が腰にからみついてきて、動きを封じ込めてしまう。
< 115 / 302 >

この作品をシェア

pagetop