Mysterious Lover
どうしてこいつ、そんなに好き好きって、気軽に口にできるの?
こんな時に、こんな風に。
これってずるいんじゃないの?
どうしたらいいか、わかんなくなるじゃない。
「好き」って言葉を、信じてしまいそうになる。この世界の、唯一の真実のように、信じてしまいそうになる。
わたしは拓巳が傍ににじり寄ってきていることに気づかなかった。
そっと頬に指が触れて、わたしはハッと顔をあげた。
「たっ拓巳?」
拓巳の整った顔が、間近にあった。
「犯人つかまえたら、ご褒美くれる?」
「え?」
「例えば……キスとかさ?」
そのまま拓巳の顔が近づいてくる。
「き……キスって……」
ちょちょちょっと待って、あの……
ソファの端へ逃れようとするけど、拓巳の腕が腰にからみついてきて、動きを封じ込めてしまう。