Mysterious Lover
エレベーターホールまで戻って。
エレベーターを待つふりしながら、わたしは混乱していた。
自分で自分の行動がわからなくて。
今の、何?
なんで工藤さんの姿を見たとたん、逃げ出すような真似……。
わたし……
工藤さんと顔を合わせるのが……怖い……?
さっき、彼の目をまっすぐ見られなかった。
心の中を……見抜かれるみたいで?
わたしの……気持ち、を……?
「奈央さん?」
とくんっ——
一瞬甘く音を立てた胸を押さえて、わたしはゆっくり振り返った。
「たっ拓巳……」
カバンを持った拓巳が笑っていた。
「奈央さん、下行くの?」
下行きのボタンを押して、わたしの隣に並んで立つ。
「あ……うん。えーっと、ちょっと、コンビニまで買い物。拓巳は?」
「打ち合わせ。新田自動車本社まで」