Mysterious Lover

顔を上げると、工藤さんがこちらへ歩いてくるところだった。
バスケ選手並みの長身に、外国製スーツがきっちりハマる広い肩幅。野性味あふれる陰影を作り出す、彫の深い顔立ち……。

思わず見とれてしまったわたしに、チラって工藤さんの視線が流れてきた。
その目が優しく細められて、わずかに笑みを作る。わたしは社内だってことを忘れて、ちょっと赤くなってしまう。

うーんっ、いつ見ても素敵だ。
余裕、かな、やっぱり。立ち居振る舞い、しぐさ、すべてが落ち着いていて、優雅で、どこにいても視線を奪われてしまう。

じっと穴が空くほど見つめていたわたしは、その後ろに工藤さんと張るくらい長身の、若い男性がついてくるのに気付いた。工藤さんよりは少し細身だな。

あれが新人くんかな?

工藤さんは制作部までくると、「みんな、ちょっと手を止めてくれ」って呼びかけた。
わたしたち、くるりと体を向ける。

そしてやっと、新人くんを正面から眺めることができた。

「予告してた通り、制作部に今日から入る亀井だ。みんないろいろ教えてやってくれ」

「なるほどぉ……確かにいいわ」
翠がうなった。

うん、たしかに……ちょっと息をのむほど、彼は美しい顔立ちをしていた。
目尻が涼し気に切れ上がったアーモンド形の瞳も、白い額からすっと通った鼻筋も、サラサラストレートの茶髪に引きたてられた精悍な頬も、それに続くシャープな顎も。
1つ1つのパーツが、神様にオーダーメイドして作りました、ってくらい整ってる。
工藤さんがゴールドなら、彼には……そうだな、プラチナが似合いそう。
整いすぎてて、ちょっと近づきがたいかも……なんて考えていると。
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