Mysterious Lover

頭の芯がジワリ、痛みを増す。
「あいつよ……あのストーカーの仕業よ……」
頭おかしいのよ……こいつ狂ってる……。

人が傷つくことに、何も感じないヤツなのよ。

「奈央さん?」
もしかして……ううん、きっと。
……わたしと一緒にいると、拓巳まで巻き込んでしまうんじゃ……?

「奈央さん」
拓巳の腕が、再びわたしの体に触れようとする。
その腕を……振り払った。
「だ……だめっ!」

声に、涙がまじる。
「わたしと一緒にいたら、拓巳まで……巻き込んじゃう……からっだから……もう放っておいてっ」

もしかしたら、次は直接狙われるかも……
ナイフとかで?
あいつなら、きっとやる。そんな気がする……。

あの……猫みたいに?

そんな、そんなことになったら……わたし……
どうしよう……どうしよう!

悲鳴をあげないように、必死で唇を噛んだ。

嗚咽をこらえながら、そのまま離れようと床に手をついて這うわたしの腰を、拓巳の腕がとらえて……わたしは有無を言わさず、拓巳の方へ引きずられてしまう。
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