Mysterious Lover
「やっ……拓巳ッ話聞いてる!?」
逃れようと振り回したわたしの腕を、拓巳がガシッと鷲掴んだ。
「やだっ……拓巳! もしナイフで刺されちゃったりしたらどうするの!? こいつ絶対おかしいのよっ!?」
わたしの体は、無理やり床に押し倒された。
「やっ……やだってば!」
全身にのしかかる拓巳の重みで動きを封じ込められて。
ようやく。
わたしは暴れるのを止めた。
そのままわたしの乱れた呼吸音だけが、暗闇の中に響く。
「大丈夫だよ。オレは、大丈夫」
「でも……っ」
「大丈夫」
ささやかれる言葉が、じわじわって体に染み込んで。
腕から、足から……力が抜けていった。
「目、少し慣れてきたね」
拓巳は起き上がって座り込むと、わたしを引っ張り上げ、その広い胸の中にくるんだ。
「とにかく、助けがくるまで気長に待とう」
「……うん」
拓巳の肩口に頬を寄せて、うなずいた。