Mysterious Lover
うなじの髪の毛が払われて、その下に拓巳の唇がきつく押し当てられる。
ぞくりと身がすくんで……。
「拓巳っ……ちょ……」
そのまま熱い唇が、そろり……首筋に這っていく。
「んっ……」
思わず、声が漏れてしまう。
なななんか……やばそうな、雰囲気……かも。
パパパッ——
その時、蛍光灯が突然瞬きながら明るさを取り戻した。
そして。
『大丈夫ですか!? どなたか中にいらっしゃいますか!?』
スピーカーから声がして。
わたしは拓巳の腕から逃れてよたよたって立ちあがった。
「あ、はい! 2人います!」
あ……危なかった……。
「ちぇっ……いいとこだったのに」
振り返ると、子どものように拗ねて唇を曲げた拓巳がいて、その姿がなんだかかわいくて、わたしはつい笑ってしまった。