Mysterious Lover

こちらを見回していた彼が、唐突にニコッと微笑んだ。
途端に、とっつきにくさは掻き消えて、やんちゃな印象が顔を出す。

「亀井拓巳です。わからないことも多く、ご迷惑をおかけするかもしれませんが、一生懸命がんばりますので、よろしくお願いします」

きゃああっって、あちこちから小さく悲鳴があがった。
——かわいいっ! 
——なにあの笑顔っ目がくらむっっ!

確かに……この顔でお願いされたら、なんでもオッケーしちゃうかも。的な邪気のない笑みだ。
ベタだけど、さしずめ天使の笑顔、ってところかな。
なんかふらついてる女子もいるし……。
仕事に支障でないといいけど。

「沢木」

突然工藤さんに名前を呼ばれて、わたしは視線を戻した。
「はい?」

「お前のクライアント、いくつか亀井に引き継ぐから、ついでに教育係としていろいろ教えてやってくれ」

「え、わたしがですか?」

わたしはチラって社内を見回した。
う、女子の視線が突き刺さる……。この場合、男子の方がいいと思うんだけど。
田所とか。
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