Mysterious Lover
ガッチャン!
かすかに物音が聞こえた。
音は……<スタッフオンリー>ってチェーンで封じられた廊下の先、少し開いたドアの向こうから聞こえてくるみたい。
もしかして……あれ、裏口かな? あそこから外に出られるかも?
人が来ないことを確認してから、そぉっと<スタッフオンリー>ゾーンに足を踏み入れる。
ドアから向こう側をのぞくと、思った通り、外へと続いていた。
よかったぁ!
ドアを開けかけて。
「ええっ? いい加減わかったかよ、拓巳くん」
拓巳の名前が聞こえて、わたしはピタッて足を止めた。
耳をすますと、「うぅ」ってうめき声が続く。
たまらずドアを少し広めに開けて、様子を伺った。
そこは狭い裏路地で、ビールケースや段ボールが積み重なり、ゴミ袋が散乱していた。
そしてその向こうに、男に襟元を締め上げられている拓巳がいた。
白いシャツは泥にまみれて、わずかに開いた唇からは、血が流れてる。