Mysterious Lover

「マジでうぜえんだよ」

ナイフの切っ先のような吊り上がった目をした男が、拓巳を蹴り上げた。

「ぐっ……ふ」

体を二つ折りにして、拓巳が地面にはいつくばる。

「拓巳ッ!」
思わず……叫んじゃった。

彼を囲んでいた2人が、同時に振り返った。

「奈央さんっ?」
上体を起こした拓巳が目をむく。

「ちょっとあんたたちっ! なにしてるのよ! け、警察呼ぶわよっ?」

そばに転がっていたビール瓶を拾い上げて、ぎゅうって両手で握りしめた。

男たちは、わたしと拓巳を交互に見て、視線を交し合う。

「拓巳の女……?」
「……もしかして、噂の“本命”か?」

「違う! この人は関係ないっ!」
拓巳がよろめきながら立ち上がって、全力で否定する。
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