Mysterious Lover
やっぱり……拓巳には、本命の人がいる……の?
わたしじゃ、ないの?
やだ、「わたしじゃないの?」だって。
……なにうぬぼれてんの。
男の1人がわたしに近づこうとして。
でもそれを、もう1人が腕をつかんで引き留めた。
「もういいだろ、戻ろうぜ。オーナーに気づかれるとやばい」
腕をつかまれた男は、忌々しそうに拓巳を振り返って。
「ふん、ま、いいや。とにかく、これ以上生意気な真似すんなよな」
2人はわたしを突き飛ばすようにして傍らをすり抜け、お店の中へ消えていった。
ホッとビール瓶を下ろすと、視界の端に、崩れ落ちる拓巳の姿が映った。
駆け寄って抱き起し、ビールケースにもたれさせて。
「大丈夫?」
薄く目を開けた拓巳は、肩をすくめた。
「かっこ悪いとこ……見られちゃったな」
小さく笑う。
「バカ! そんなこと気にしてる場合? あいつら一体何?」
「この店の指名上位2人。あいつらの上客が、今夜オレを指名してきたから、それでブチ切れたってわけ」