Mysterious Lover
「ドストライクだ」
長くて綺麗な指……なんて、束の間見とれてしまって、彼の言葉を脳内変換するのに少し時間がかかった。
「……どすとらいく?」
亀井くんが、わたしの腕を引く。
きれいな顔が息がかかるほど間近にせまって、またしてもドギマギしてしまった。
え、えっと……近すぎ、じゃない?
「めちゃくちゃ好み、ってこと」
「好み? ……は?」
話が見えなくて、わたしは焦る。
工藤さんの困ったような顔が亀井くんの肩越しに見え、ますます焦って、彼から離れようともがいた。
今や社内はしんと息をひそめるようにして、成り行きを見つめてる。
えっと……あのう、この状況は、どうすれば?
「沢木奈央さん、だっけ?」
「はいっ?」
「オレたち、つきあっちゃいません?」
…………はい?