Mysterious Lover

「言えないの!」

「……どうしても?」

「どうしても!」

すると、
あっさり、わたしにかかっていた重みが消えて。
拓巳はわたしを解放し、体を起こした。

「た拓巳?」
乱れた服をごそごそって直しながら起き上がると、拓巳はソファの背に体重を預けて、天井を仰いでいた。

「やっぱり……部長じゃないとだめか」
表情を曇らせてわずかに笑う拓巳に、わたしは首を振る。
「そっそういうことじゃ……」

「そういうことだろ。結局」
拓巳は肩をすくめて、唇の端をゆがめた。

無造作に投げ出されたその手足に、言葉にならないほどの哀しみが見えて。

「あの、違うの。ほんとに、そうじゃなくて。わたっ……わたしのせいなの!」

気が付くと、必死に封じ込めてきた過去が……扉が、ほんの少し開いてしまっていた。

「え?」
不思議そうな視線が、わたしを向く。

「あの……わたし……」
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