Mysterious Lover
いともたやすく返されたひと言に、わたしは「え?」って顔をあげた。
「怖いんでしょ?」
あ……
「好きだって、愛してるって伝えて、その後で自分の気持ちが変わってしまったら。それで相手を傷つけてしまったら。裏切ってしまったらどうしよう。だから、怖くて口にできない」
わたしは呆然と、拓巳を見つめた。
ピタリとはまったパズルのピースみたいに、彼の言葉は、わたしの心にすとんと落ちた。
そうだ……うん。
その通りだ。
拓巳の指が、手が、ゆっくり、繰り返し、わたしの頬を撫でる。
そして。
「……裏切られたことが、あるんだね?」
静かに落ちた、その言葉に。
びくんっ——
体が、心が、振れる。