Mysterious Lover

忘れてた……
こいつ、ほんとに頭の回転、速すぎるっ……!

わたしは我慢できずにガバッと立ち上がった。

「も、もう寝よっか。明日も仕事あるし。ね!」

こいつから離れて冷静にならなくちゃ。早く!

そう思ったのに。

唐突に。
背中が、暖かいもので包まれた。
背後から抱きしめられているのだと気づいて、わたしの体はガチッて固まってしまう。

「ちょっ……たく……」

「でもオレはさ」

うなじに、拓巳の低いささやきが触れる。
体が……熱い。

「明日のことを心配して、今日の幸せを逃しちゃうのは、もったいないと思うよ」

え……?

「ほら、めちゃくちゃおいしいチーズケーキが目の前にあってさ、いつ食べようか、どうやって食べようか、誰かに盗られるといけないから、隠しておこうか、とか考えすぎて、賞味期限切れてた、みたいな」
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