Mysterious Lover

温かなお味噌汁に、真っ白なご飯。
他愛もないやりとりと、いつもの笑顔。

鮮やかに室内を染めていく、朝日。
深まる秋の、一日。

たったそれだけのことが、涙が出そうなくらい、いとおしい。

この時間が、ずっとこのまま続いてほしい。
明日も、明後日も、こんな時間を過ごせたら。
そんなことを考えている自分に気づいて、わたしはびっくりした。

それは、今まで一度も味わったことのない、出会ったことのない感情で。

この気持ちが、「好き」……っていうこと?

わたし、拓巳のこと、好きなの?

わからない。わからないけど……。
でも、拓巳と一緒にいたい。もっとずっと……
その存在が、わたしの中で大きくなっていることは、まぎれもない事実のようで。

それはつまり。

もう工藤さんとは今まで通りお付き合いはできないってこと、だよね。
ちゃんと、けじめをつけなくちゃ。
心の中でつぶやいた。
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