Mysterious Lover
「でもさあ、あの告白にはぶっ飛んだけど、あいつ、仕事はなかなかやるぜ?」
う……
まあ、
そうなんだよね。悔しいけど。
ボストンの大学を卒業して、その後しばらくニューヨークでインターンをしていた、という彼は英語ペラペラで。
たまたま今朝、田所のところに、ニューヨークに本社を置くコスメブランドの広告案件が来てたんだけど……
本社からの指示レターを的確に翻訳したうえ、現地で好まれる広告傾向をもとに、企画案をさらっと3つも出してくれちゃったのだ。
工藤さんも、「やるな」ってうなるほどの出来。
そんなわけで、たった数時間で彼は社内のトキの人、だったりする。
「だいたい、わたしには……」
いいかけて、口をつぐんだ。
そうだ。田所にはまだ話してないんだった。工藤さんとのこと。
言いよどむわたしに、「おんや?」って田所が突っ込む。
「なんだよ、もしかして沢木って男いんの?」
「あ、そっか、田所知らないんだっけ?」
「ちょちょちょっと翠ッ!」
「え、なんだよ! 相馬は知ってんの? 俺だけ除け者!? ひっでえ」
「ち、違うって! 付き合ってる……っていうか、なんていうか、その……」