Mysterious Lover
「落ち着いて。落ち着いて思い出して」
記憶をたどる。この前あの資料を使ったのは、いつだったっけ?
記憶を巻き戻す……
あっ……!
そうだ、拓巳がうちに泊ったあの日……持ってて。
そのままアパートに置き忘れた……かも……
わたしは「うそでしょ……」って頭を抱えた。
あれがないと、原稿が書けない。今日ある程度進めておかないと、明日中に仕上げるのは無理だ。
腕時計を見ると…もうすぐ8時。
取りに……戻る?
あの部屋に一人で行くのは嫌だけど。
でも、土曜中に仕上げなかったら、日曜日も出てこなくちゃいけないし。
そしたら拓巳との約束が……。
べ、別にあいつのためじゃ、ないけど……。
心の中で言い訳して。