Mysterious Lover

「相馬さん、田所さんも。お疲れ様です」

亀井くんがトレイを手に、近づいてきた。
「ここいいですか? 奈央さん」

返事も聞かず、わたしの隣に腰掛ける。
なななんでサラッて会社の人間名前で呼ぶかな。こいつは。

「部長のオリエン、終わったのかよ?」

「はい、ようやく。もう腹減って死にそう」

サバの味噌煮定食を前にして手を合わせると、「いただきます」なんてきちんとお辞儀する。
「へえ、帰国子女なのにちゃんとしてんね」

翠が感心すると、「オレ、向こう行ってたの大学だけですよ」って、飄々と箸をつけ始めた。
「すごいっすね、ここ。和洋中、種類ハンパなし」

「これなら毎日飽きないですね」って無邪気、っていう言葉がぴったりの笑顔を向けてくる。
う、この顔は犯罪だ……。

「ま、とにかくさ、あたしはカメちゃんの味方、だからね」

翠、カメちゃんて……何そのカジュアルさ。一応会社の人間でしょ。
って脱力してると、翠と田所がトレイをもって立ち上がった。

え? ちょっと翠?
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