Mysterious Lover
拓巳なら……わたしの持ち物だってデスクにだって、簡単に盗聴器を仕掛けられる……。
——君ハ、僕ノモノダカラネ。
——アンマリ、男ト、イチャツカナイデネ。
——僕、怒ッチャウヨ?
——怒ッタ君モ、素敵ダネ。カワイイヨ。
ボイスチェンジャー越し、奇妙に甲高い、声。
拓巳のからかうような口調に、重なってしまうような気がして、
唇をきつくかみしめて、わたしは一生懸命記憶を探った。
パソコンがウイルスに侵された時……拓巳が直してくれた。
駅の階段から落ちた時……拓巳が受け止めてくれた。
エレベーターに閉じ込められた時……拓巳が守ってくれた。
猫の入った箱が届けられた時……拓巳が駆けつけてくれた。
拓巳が。拓巳が。拓巳が……
なに……これ。
偶然なの? 偶然がこんなに重なるのって……おかしくない?
頭の中で、もやもやとした何かが、急速に一つの形を成していく。
でも……
駅の階段から落ちた時は?
誰かに、『後ろから』押されたのよ。
拓巳は、わたしの前にいた。