Mysterious Lover
それから……訪れたのは、静寂。
呼吸の音すら吸い込まれそうな、その静けさの中、わたしは怖々と顔を上げた。
背後を見ると、ばらばらに崩れた角材が散らばって、闇の中に砂が舞い上がり、辺りを白く包んでいた。
拓巳は……どこ?
姿が……見えない。
体を起こして、おそるおそる角材の下をのぞきこんだ。
「た……くみ……?」
角材の間から……拓巳の姿がのぞいている。
ピクリとも動かない。
そして……地面に、黒い染みが……見えた。
それはじわり、広がって。
血だ。
拓巳の、血……。
「や……拓巳? ね、拓巳……たくみっねえっ」
黒い夜空にか細く瞬く星のように、わたしの声は、今にもかき消えそうなほど弱々しく響いた。