Mysterious Lover
「日曜日、デートの約束だったでしょ」
「そのケガで?」
「まぁ、そりゃそうだけど」
拓巳がため息をついて、包帯ごし、イライラしたように頭をかいた。
「オレ、いろいろ説明しなきゃいけないことがあって」
「説明? へえ、なんの?」
「……奈央さん?」
目線をかわし続けるわたしに焦れた拓巳が、腕をつかみ、「こっち見て」って、無理やり反転させた。
仮面がはがれそうになるのを必死でこらえて、拓巳を見上げる。
「助けてくれて、ありがとう。お礼は言う。でも、もう全部、わかってるから」
感情をこめずに、ただ何かを読み上げるように、言葉を吐きだした。
そうしないと、何かに突き動かされて、叫び出してしまいそうだったから。
悲鳴を、あげてしまいそうだったから。
「……奈央……さん?」
わたしの様子に気づいたのか、拓巳は訝しむようにわたしの腕をするりと放した。
「あの夜、後つけたこと、まだ怒ってる? だからそれはストーカーから電話が」
「よくできたシナリオだよね。亀井くんが考えたの?」