Mysterious Lover
うん。でも確かに。彼は目を惹く。
定規でも入れてるんじゃないの? ってくらいぴんと背筋を伸ばして、長い指で箸を操り、魚の身を器用に分けていく様子は、淀みなく流れる演舞のようで。
なんとも絵になって、つい目で追ってしまう。
「奈央さん」
ふいに、くすっと小さく亀井くんが笑った。
「え?」
「そんなに見つめないで。オレ、ソノ気になっちゃうよ?」
ええっ!?
「や、あの、その……べ、別にそんなわたしはっ」
焦りまくるわたしに、亀井くん、ぶって吹きだした。
「あははははは……顔真っ赤! 奈央さん、ほんっとかわいいね。めちゃくちゃかわいい!」
う……こいつ性格悪くない?
「もおっ年上からかわないでって言ったでしょ!? さっさと食べて、戻るわよ!」
「奈央さん」
カタン。
亀井くんが箸を置いて、わたしに向き直った。