Mysterious Lover
バタバタってゴミ袋を取り出すと、わたしは猛然と荷物をまとめ始めた。
新しいアパートは昨日決めてきたし。
ストーカーの話をしたら、大家さん、すぐに来てもいいよって言ってくれたし。
年末の校了が終わったら引っ越すつもりだったから。
だから今から荷物、まとめられるものだけ、まとめちゃおう。
まずは、捨てるものだけ決めて。
全然着ない服や、履かない靴も、この際断捨離ってやつよ、ガンガン捨てる。
キッチンの棚に放置された賞味期限切れの調味料、埃をかぶったままの調理器具も。
どんどんゴミ袋に突っ込んでいく。
そして……
わたしの手は“それ”にのびた。
ほんの一瞬のためらいののち……ゴミ袋に入れた。
カチャン。
小さな音が響いた。
何かが、壊れたみたいな、音だった。
その勢いにのって掃除を続けて、ゴミ捨て場まで何度か往復して、真夜中過ぎ、ようやくベッドに入った。