Mysterious Lover

——亀井さんがホストなんて似合いすぎだよね〜!
——亀井さんが働いてるお店なら、あたし行ってみたい〜!
——ええっあたしも行きたい〜!!
——誰だろ、こんな写真送ったの。
——あれじゃね、客が本気になって亀井に告ったけど、断られて、腹いせに、とかさ。
——逆恨みってことですか? あるかもぉ。こわっ!
——ここで働く前だったら、別に何してても問題ないだろ?
——でも、このデータ、日付が1週間前ですよ?
——つまりダブルワークってことか?
——それ、ちょっとやばくね? うち副業禁止だろ?


社内で交わされる会話が、頭の中を素通りしていく。
どうして……だれが、こんな写真を……。

すると、ふいにざわめきが大きくなって……顔を上げると、数メートルの距離に拓巳が立っていた。

わたしのことは、視界に入ったはず……だけど。
視線は一度も絡まない。
当然だ。そう……当然。

注目を集めていることに気づいているのか、いないのか、拓巳は淡々と自分の席へ向かう。

「おい、亀井、お前……さ、あの、あれか、ハロウィンの仮装、結構凝ってんな!」
田所があはははって引き攣った笑いを浮かべて、拓巳の肩をたたいた。
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