Mysterious Lover
25. 余波

ボールが転がる。
オレンジ色の、バスケットボール。

小さな男の子が、たどたどしい足取りで追いかけて、ボールを手に取った。

「えーいっ!」
大きなボールを、バスケットゴールに向かってぽいっと放る。
ボールは数10センチ先に、ぽとりと落ちて。
コロコロ、お父さんの方へ転がっていく。

笑いながら、お父さんがそのボールを取り上げた。

「ねえ、パパ、ぼくエービービーに入れるかなあ?」

「NBAだな。それを言うなら」
お父さんが笑う。

「エ……ビーエー?」
男の子が首を傾げる。

「誠司さん、拓巳、そろそろ帰りましょう」

きれいな女の人が、公園の入り口から呼んでいる。
たくみ、と呼ばれた男の子は、お父さんの手を引っ張るようにしながら、歩き出した。

「ねえママ、ぼく、エービーエーに入りたい!」

「エ、エービー……なんなのそれ?」

お父さんの笑い声が響く。
< 233 / 302 >

この作品をシェア

pagetop