Mysterious Lover
25. 余波
ボールが転がる。
オレンジ色の、バスケットボール。
小さな男の子が、たどたどしい足取りで追いかけて、ボールを手に取った。
「えーいっ!」
大きなボールを、バスケットゴールに向かってぽいっと放る。
ボールは数10センチ先に、ぽとりと落ちて。
コロコロ、お父さんの方へ転がっていく。
笑いながら、お父さんがそのボールを取り上げた。
「ねえ、パパ、ぼくエービービーに入れるかなあ?」
「NBAだな。それを言うなら」
お父さんが笑う。
「エ……ビーエー?」
男の子が首を傾げる。
「誠司さん、拓巳、そろそろ帰りましょう」
きれいな女の人が、公園の入り口から呼んでいる。
たくみ、と呼ばれた男の子は、お父さんの手を引っ張るようにしながら、歩き出した。
「ねえママ、ぼく、エービーエーに入りたい!」
「エ、エービー……なんなのそれ?」
お父さんの笑い声が響く。