Mysterious Lover
「は、はいっ今行きます!」
わたしは急いでそちらへ向かった。
拓巳が謹慎して、もう1週間が経つ。
工藤さんは、謹慎期間を『しばらく』としか説明してくれかった。
拓巳の声が聞こえない。
拓巳の姿が見えない。
たったそれだけのことなのに。
昔に戻るだけなのに。
……どうして気持ちは、簡単に戻ってくれないんだろう?
あいつはストーカーで、あの女の息子で。わたしは騙されてたのよ?
散々わたしの生活、めちゃくちゃにしてくれて。
憎めばいい。
憎んで、忘れてしまえばいい。
なのに。
どうしてこんなにも……あいつのことばかり考えてしまうの?
最近のわたしは、まともに食事がのどを通らなくなっていて。
心と体が、バラバラに呼吸をしてるみたいに、なんだかすべてのことにリアリティが感じられなくて。仕事でもミスを連発して、工藤さんから注意を受けた。