Mysterious Lover

「はい?」

清水さんは、その美しい顔を曇らせて「商品が違いますけど」って言い放つ。

一瞬意味をつかみかねて、ぽかんとしてしまう。
慌てて企画書を確認して。

「え? ……でも、『お任せくん』シリーズのオーブンレンジ、ですよね?」
うん。間違いない。

清水さんは眉をひそめたまま、うなずいた。
「ええそうです。ですが、これはテスト撮影用にお送りした、社内用のダミーです。もう1つ、本番用をお送りしたはずですが」

「え……もう1つ?」

「えぇ。計2個、ちゃんとお送りしましたよね?」

「2個……」


——同じもの2個あっても重いから。撮影にもっていくのは1個で十分。


「あ……!」

全身を、何かが駆け抜ける。

……あれ、2つ……って、同じものじゃなかったんだっ!!
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