Mysterious Lover
心が再び、ずんて落ちる。
その期待に応えられなかった……わたしのミスのせいで。
でも、上司に報告しないわけにはいかない。
「工藤さん、あの……実は」
わたしは、小さくなって口を開いた。
◇◇◇◇
報告を終えて、わたしは投げられるだろう叱責を覚悟して、うつむいた。
「それで、この後はどうするんだ?」
椅子の背に体重を乗せて、工藤さんがデスクの前に立つわたしを見上げる。
その声音は予想外に静かで、落ち着いていた。
「は……はい、今日、清水さんとスタッフとのスケジュールを照らし合わせて、再撮日を3日後ということで、決めてきました」
「うん」
「ただ、同じスタジオが、3日後は予約が入っているそうで、これから別の所を探します」
「キッチンスタジオだ。選択肢は限られるな。年末でどこもフル稼働だろうし」
「幸い料理撮影はありませんので、キッチンぽく見せられる場所であればいいかと思います。ですので、ハウススタジオも考慮に入れて、片っ端からあたろうと」
「そうか……わかった。じゃあ今日はもうあがれ」
「いえ、これからスタジオをいくつかあたりますので」