Mysterious Lover
◇◇◇◇
重厚なドアが、わたしの前で開いた。
仄明るい間接照明が照らし出す廊下が、細長く伸びていく。
付き合い始めてから知ったけれど、工藤さんはかなりのワイン好きだ。
使っていない部屋もいくつかある、というファミリータイプのマンションを独り暮らしの工藤さんが購入したのは、ひとえにワインのためらしい。
温度と湿度を完全にコントロールできる、ワインセラーに改造するための部屋を探して、たどり着いたのがここ、なのだそう。
でも疲れた足に、こんなくねくね長い廊下はちょっと……なんて、口の中で小さくぼやきながら歩いていくと。
「うわ……」
無意識に感嘆の声が漏れていた。
間仕切りを一切取り払ったリビングダイニング。
足を踏み入れるとすぐに、高さを出した天井いっぱいまではめ込まれたガラス越し、ジュエリーボックスをぶちまけたような夜景が目に飛び込んでくる。
「相変わらず、素敵なお部屋ですね」
わたしが言うと、ネクタイをゆるめた工藤さんはちらっと笑って、「ちょっと座ってて。すぐできるから」とキッチンに入っていく。
重厚なドアが、わたしの前で開いた。
仄明るい間接照明が照らし出す廊下が、細長く伸びていく。
付き合い始めてから知ったけれど、工藤さんはかなりのワイン好きだ。
使っていない部屋もいくつかある、というファミリータイプのマンションを独り暮らしの工藤さんが購入したのは、ひとえにワインのためらしい。
温度と湿度を完全にコントロールできる、ワインセラーに改造するための部屋を探して、たどり着いたのがここ、なのだそう。
でも疲れた足に、こんなくねくね長い廊下はちょっと……なんて、口の中で小さくぼやきながら歩いていくと。
「うわ……」
無意識に感嘆の声が漏れていた。
間仕切りを一切取り払ったリビングダイニング。
足を踏み入れるとすぐに、高さを出した天井いっぱいまではめ込まれたガラス越し、ジュエリーボックスをぶちまけたような夜景が目に飛び込んでくる。
「相変わらず、素敵なお部屋ですね」
わたしが言うと、ネクタイをゆるめた工藤さんはちらっと笑って、「ちょっと座ってて。すぐできるから」とキッチンに入っていく。