Mysterious Lover
「どうして何も話してくれなかったんだ?」
「すみません、急にそういうことになって……それで、実はもう高円寺に決めたんです」
「あれ、もう決めちゃったのか?」
頷いたわたしに、工藤さんが顔をしかめた。
「まだ契約はしてないんだろう?」
「えっと、書類をそろえてからになりますけど、引っ越しだけ、先にしてもいいって大家さんにいわれているので、早めに移ろうかと」
「……行くな」
低く、つぶやく声が聞こえて。
「え?」
「ここに住めばいい」
さらりと言われて、わたしはドキッと視線をあげた。
キャンドルの炎越し、工藤さんがテーブルに肘をついて、わたしをじっと見つめていた。
「もちろん、プロポーズだと思ってくれて構わない」
「くっ工藤さん!」
「俺は前に失敗してるから、別に結婚て形にこだわってるわけじゃない。奈央がしたくないのなら、それでもいい。ただ……そばにいてほしい」